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II号戦車L型「ルクス(山猫)」は、長らく続けられていたII号偵察戦車計画の中から誕生した車両であり、集大成的な存在として、唯一、大量生産が行われたものである。 開発は、VK1303の開発名称が与えられて1939年4月から開始され、1942年8月には生産に移行する計画が立てられていた。 車体はMAN社、戦闘室と砲塔はダイムラー・ベンツ社がそれぞれ担当して開発作業が進められ、1942年4月にようやく試作車が完成した。 開発に多大な時間を要したのは、度々要求変更が行われたからで、他の車両の開発と併せて、ドイツ軍が偵察戦車に多大な期待をかけていたことが分かる。 ルクスは、一連の新型II号戦車シリーズの設計を受け継ぎ、洗練された車体、砲塔形状を持っていた。 ただし、パンター中戦車以降のドイツ軍戦車のような避弾経始は、まだ十分に採り入れられてはいない。 特徴的なのは足周りで、II号戦車G型以来のオーバーラップ式転輪配置が採られていた。 この転輪は、II号戦車M型がスポーク式だったのに対し、ルクスではディッシュになっており、起動輪、誘導輪の形状も変更されている。 エンジンは、マイバッハ社製のHL66P 直列6気筒液冷ガソリン・エンジン(出力180hp)、トランスミッションは、ZF社製のSSG48を用い、路上最大速度は60km/hを発揮し、偵察戦車としては十分な速度性能を有していた。 武装は、55口径2cm機関砲KwK38と、7.92mm機関銃MG34が各1門ずつである。 II号戦車と同じ武装だが、配置は、2cm機関砲が砲塔中心線上に来て、7.92mm機関銃が左側に同軸装備されるようになっている。 弾薬搭載数は、2cm機関砲弾が330発、7.92mm機関銃弾が2,250発である。 車体の装甲厚は、前面30mm、側、後面20mm、上面10mm、砲塔は、前面30mm、側、後面20mmである。 乗員の作業効率を高めるために、操縦手の隣には無線手が位置し、さらに、砲塔内には砲手が追加されて、乗員は4名となった。 試作車の優れた高速性能に満足した兵器局第6課は、1943年1月に800両の発注を行ったが、そのうち、初めの100両が55口径2cm機関砲KwK38を装備し、残りの700両は、より強力な60口径5cm戦車砲KwK39/1を装備することとされていた。 しかし、武装の変更などの些事に追われて生産にはなかなか入ることができず、ようやく1943年9月より生産が始められたものの、これに先立つ5月に、ルクスの生産は最初の100両だけで打ち切ることが命令された。 その結果、1944年1月に生産型第100号車が完成した時点で生産は終了し、5cm戦車砲搭載型は生産されなかった。 この背景には、同じ5cm戦車砲KwK39/1を装備するSd.Kfz.234/2プーマ装甲偵察車の実用化があったことはいうまでも無く、装甲を除けばあらゆる点で、プーマの方がルクスを上回っていたからである。 しかも、登場した時点ですでに火力、装甲とも不十分で、速度性能だけでは生き残ることは難しく、この生産中止の決定は当然のことであろう。 少なくとも、1942年初めから実戦化されていれば、それなりの需要はあったと思われるが、実戦化が1943年末では、もはや遅過ぎたとしかいえない。 |
<II号戦車L型ルクス> 全長: 4.63m 全幅: 2.48m 全高: 2.21m 全備重量: 13.0t 乗員: 4名 エンジン: マイバッハHL66P 直列6気筒液冷ガソリン 最大出力: 180hp 最大速度: 60km/h 航続距離: 290km 武装: 55口径2cm機関砲KwK38×1 (330発) 7.92mm機関銃MG34×1 (2,250発) 装甲厚: 10〜30mm |