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●III号戦車M型 III号戦車M型は、主力戦車としてのIII号戦車として最後となったタイプである。 M型は、当初は1,000両が発注されたものの、新型主力戦車となるべきパンター中戦車の生産が優先され、さらに、III号突撃砲や次のN型や火炎放射戦車に車体を引き抜かれたため、1942年10月から1943年2月までに250両が生産されたにとどまっている。 M型は、L型の渡渉能力向上型といえる車体であるが、何故、急に渡渉能力が重視されるようになったかはよく分からない。 渡渉能力強化といっても、潜水渡河装置を持つほど本格的なものではなく、排気口や冷却空気取り入れ口などを水密式にして、渡渉水深を稼いだものである。 このために、エンジン・ルーム左右にあるルーバーは、水密扉で閉鎖できるようになり、エンジン・ルーム後部のオーバーハング部は塞がれて、冷却用に開口できるハッチが設けられている。 なお、このオーバーハング部内側にあったスモーク・ディスチャージャーは行き場を失い､代わりに砲塔両側面前部に、各3本のスモーク・ディスキャンドルが取り付けられるようになった。 排気については、これまでのマフラーが廃止され、オーバーハング部の外側の持ち上げた位置まで排気をパイプで導いて、新たに円筒形のマフラーが取り付けられるようになった。 このマフラー自体も、防水弁が取り付けられている。 なお、車体各部のハッチには、防水用のゴムパッキングが装着されている。 これらのおかげで、渡渉水深はL型までの0.8mから、1.5mにまで増加した。 なおIII号戦車には、1943年3月から車体と砲塔側面に、スペースを開けて5mm厚の装甲板を取り付けるような改造が施されるようになった。 これは、ドイツ語で「シュルツェン」と呼ばれる補助装甲板で、ソ連軍歩兵の対戦車銃による、クラッペや車体側面などの弱い部分への狙い撃ちに悩まされた、ドイツ軍が採った対抗策であった。 さらに1944年からは、磁石により装甲板に張り付く吸着地雷の使用を防ぐため、ツィンメリットペーストと呼ばれる、対磁コーティングを施す作業が行われた。 コーティングは、車体の前、側、後面の垂直ないし傾斜面に施され、細かいギザギザ模様が付けられていた。 このような強化策が採られ続けたものの、大戦中期以降、III号戦車は、その本来の目的である主力戦車としては、もはや二線級なのは明らかであった。 このため、1943年8月をもってIII号戦車の生産は終了し、以後、車体は、対戦車兵器として必要性が増してきたIII号突撃砲用として生産が続けられた。 III号戦車は、終戦までに15,000両に及ぶ戦車型とその派生型が生産されており、これは、ドイツが生産した装甲車両の中で最高の数字である。 |
| ＜III号戦車M型＞ 全長： 6.41m 全幅： 2.95m 全高： 2.50m 全備重量： 22.7t 乗員： 5名 エンジン： マイバッハHL120TRM 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン 最大出力： 300hp／3,000rpm 最大速度： 40km／h 航続距離： 155km 武装： 60口径5cm戦車砲KwK39×1 （84発） 7.92mm機関銃MG34×2 （2,700発） 装甲厚： 10〜57mm |