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●開発 突撃砲装備の部隊が報告してきた戦車戦における驚くべき戦果と、もう1種類の車両を生産したいというメーカーの願望は、1942年9月に、IV号駆逐戦車の構想を検討するという陸軍兵器局の指令となって具体化した。 この任務は、プラウエンのフォマーク社に与えられた。 シャーシーには、48口径7.5cm対戦車砲PaK39が搭載できるように改修したIV号戦車シャーシーを流用することが計画され、1943年5月13日には、ヒトラーに木製モックアップモデルが披露された。 デザインはまだ暫定的なものであったが、このモックアップでは、IV号戦車シャーシーはそのまま改造されずに用いられており、その低姿勢の上部戦闘室に7.5cm砲が搭載され、車高はわずかに1,700mmに過ぎなかった。 この低い上部車体はほとんど理想的ともいえたが、起伏のある地面で必要とされる射撃可能な高さの限界にあることがすぐ明らかになった。 傾斜させた装甲板と、突撃砲と比べてより小型の球形砲架を持つ防盾については、改善を要する点はほとんど無かった。 1943年の夏の間にデザインは絶え間なく改善されていったが、重要な変更は車体前面部に関するものであった。 ちなみに、IV号戦車の前面装甲板は、大戦当初は14.5mmだったものが、最終的には80mmにまで強化されていった。 前面装甲板の傾斜角は15度しかなく、80mm装甲板は通常射程において、アメリカのM4中戦車の75mm戦車砲と、ソ連のT-34中戦車の76.2mm戦車砲に対しては十分であったが、イギリスの17ポンド対戦車砲と、T-34/85中戦車の新型長砲身85mm戦車砲に対しては無力であった。 すでに1943年2月に陸軍兵器局は、IV号戦車の前面装甲板を鋭傾斜角の装甲板に改善することを提案していた。 この提案は、大量生産に不向きであるとの理由で再三に渡って拒絶されてきたが、IV号駆逐戦車という全く新しい車両の製造を開始するのに伴い、ようやく実現する機会が巡ってきたのである。 新しい前面装甲板は、上部装甲板が厚さ60mmで45度の傾斜角を、下部が厚さ60mmで55度の傾斜角を有していた。 これにより防御力は、110mmと123mm厚の垂直な圧延鋼の装甲板に相当することとなった。 IV号駆逐戦車の軟鉄製試作型は、1943年12月20日にヒトラーの査閲を受けた。 上部車体前面装甲板には、主砲の両脇に各1挺の機関銃を格納する円形開口部が1つずつあった。 試作型では、側面装甲板と前面装甲板の接合部は丸みを帯びた曲面となっていたが、生産時間とコストを節約するため、量産時には単純な平面装甲板が用いられた。 試作型には、円形の機関短銃用ピストル・ポートが上部車体の両側に備えられていたが、やはり同様に量産時には廃止され、代わりに、近接防御兵器を戦闘室上面に取り付けることが計画された。 |
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●特徴 走行機構と駆動ユニットが付いたIV号戦車F型の基本シャーシーは、そのままIV号駆逐戦車に流用された。 マイバッハ社製のHL120TRM V型12気筒液冷ガソリン・エンジン、ZF社製のSSG76型6段変速機、ステアリング装置と減速機、上蓋付きの機関室、車体後部と起動輪、誘導輪、補助転輪、走行転輪を含めた全ての走行機構コンポーネントと履帯も、同様に変更されずに引き継がれた。 シャーシーの構成部分において、IV号戦車F型との相違は次の通りである。 1.車体前面部は、IV号戦車と比較して鋭角的である。 2.脱出用ハッチは長方形となり、開閉方式も新型となった。 従来、無線手のそばにあった降車口は、車体床下の中央/左手に移設され、砲手座席のすぐ後ろとなった。 3.IV号戦車に設置されていたDKW(砲塔旋回)ユニットの代わりに、IV号駆逐戦車では増加燃料タンクが設置さ れた。 一方、IV号戦車には砲塔床下に2基の主燃料タンクがあったが、車高を低くするため、主砲取り付け部の前方 下に移設された。 その結果、燃料注入口も移設された。 4.ブレーキ用換気装置の設置、戦闘室暖房システム、IV号戦車と異なるもう1基の無線機を有する無線装置の 搭載(Fu.5型無線機1基と、操縦手のそばにFu.8型無線機1基追加設置)、などが変更となった。 5.全ての付属品は、IV号戦車と異なる新しいレイアウトに応じて収納された。 シャーシーがほとんど変更されず流用された一方で、上部車体は新設計となった。 上部車体は完全密閉式で、全ての装甲板は良好な傾斜角を有しており、前面装甲板は厚さ60mmで傾斜角50度、側面は40mmで30度、そして後面は30mmで33度であった。 主砲は48口径7.5cm対戦車砲PaK39で、砲は、装甲上部車体の前面装甲板に楔によって固定された防盾の中に、カルダン枠構造で据え付けられており、中心から200mm右側にオフセットして設置されていた。 兵装の取り付け部は、球形収納部、外装式装甲のザウコフ防盾と砲により構成されていた。 また、乗員用に次のような副武装を備えていた。 1.7.92mm機関銃MG42 1挺 2.7.92mm突撃銃MP44または9mm機関短銃MP40 3.上部車体上面に装甲車両装備用近接防御兵器 1基 この対歩兵近接防御兵器は、360度回転可能で、煙幕弾または2.6cm榴弾が発射できた。 車内には砲弾79発、その他に機関銃用弾薬1,200発、機関短銃用弾薬384発と近接防御兵器用弾薬16発を装備していた。 大抵の場合、IV号駆逐戦車は榴弾と対戦車徹甲弾を各々同数携行したものの、この比率は投入される際の戦況に応じて変化した。 乗員は、車長、砲手、装填手、操縦手の4名で構成されていたが、指揮戦車では、さらにもう1名無線手が追加となった。 視察装置については、操縦手用に2基のペリスコープ(プリズム型眼鏡)が、IV号戦車の防弾ガラス式ブロックの代わりに使われた。 また、操縦手のすぐ後ろに位置する砲手は、自走砲用望遠照準眼鏡1a型(Sfl ZF 1a)1基とペリスコープ1基を通して外を見ることができた。 上面の望遠照準眼鏡用開口部は、スライドカバーにより防御されていた。 砲手のすぐ後ろの車長は2分割式のハッチを使用できたが、砲隊鏡(Sf 14 Z)使用の際は、ハッチの前半部のみを開放した。 さらに、車長はハッチ上面に設置された旋回式ペリスコープを使うこともできた。 装填手兼無線手は、右方向のペリスコープと前方にある機関銃用射撃孔を使ったり、頭上にある上部車体上面の円形ハッチを開けて視察することもできた。 長期に渡り生産されたその他のドイツ戦闘車両と同様に、IV号駆逐戦車においても標準型と呼べるものは存在しない。 量産中にも、生産簡易化と品質改善のための改造提案が絶え間なく行われ、さらに、材料の供給上の問題もまた改造の原因となった。 生産中に実施されたIV号駆逐戦車の主要な変更点は、次の通りである。 1944年1月 IV号駆逐戦車では全車に、近接防御兵器の取り付け用の円形開口部が上部車体に設けられた。 しかしながら生産の遅延により、この兵器は恒常的に供給不足にあったため、大半のIV号駆逐戦車は、4本のネジ止め式の円形装甲カバーで開口部を閉鎖していた。 1944年2月 車両前方部の重量を軽減するため、それまで車体前部上面に搭載されていた予備履帯を車体後面に移設した。 また、車体後面の上部に取り付けられていた2個の予備走行転輪は、機関室上面左側に新しく固定された。 1944年3月 戦闘室前面の左側にあった機関銃用装甲カバーは、限られた場合にしか使用しないため廃止された。 しかしながら、すでに開口部が設けられ、製鉄所で熱処理されていた車体については、組み立て工場で、この円形開口部に厚さ60mmの円錐形装甲板を溶接して塞ぐことにした。 また実験的に、1944年3〜4月に生産されたIV号駆逐戦車の一部には、装填手用ハッチの前に旋回式機関銃の取り付けホルダーが取り付けられた。 1944年4月 車体のノーズヘビーをより一層改善するため、内装式砲防盾固定部の下方外縁部が削除された。 1944年5月 シャーシー番号No.320301から、車体前面と戦闘室装甲板の厚さが80mmに増強された。 また、機関銃用の円錐形装甲カバーの径が大きくされ、機関銃の格納性と旋回性が改善された。 1944年5月末まで主砲にはマズル・ブレーキが備えられていたが、射撃の際に土埃が舞い上がり、視界を極端に妨げるため、前線部隊ではほとんど取り外しており、生産時においても以後、マズル・ブレーキは取り付けられなくなった。 IV号駆逐戦車は、砲塔ではなく戦闘室前面に主砲が搭載されているため、射撃時の反動は車両全体に分散することとなった。 1944年6月 機関室上面の冷却水注入口スタッブを覆う装甲カバーは、周囲側面が傾斜していたが、以後、製造をさらに簡易化するため、単純な板状に変更された。 1944年9月 バックファイアを減少させるため、新たに設計された垂直設置型の消炎マフラー付き排気管が取り付けられた。 ローラーベアリング(ころ軸受け)を節約し、かつ製造時間を短縮するため、両側の補助転輪を4個から3個に減少させた。 雨天の際の燃料注入については、前線部隊から改善要求が出されたため、戦闘室の前面、側面、後面の上部に細いホルダーを溶接し、これにテント布地を取り付けることにより、車体上部全体を覆うことができるようにした。 磁気吸着式成形炸薬弾に対して用いられていたツィメリット・コーティングは、対戦車徹甲弾が命中した際、装甲が貫通しなくても火災が起きることが判明したため、組み立て工場でのツィメリット塗布は中止された。 指揮戦車は前述した通り、増設無線装置用として機関室上面前方の左隅に2本目のアンテナを有しており、容易に識別できた。 |
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●生産 1944年1月に、フォマーク社は最初の30両のIV号駆逐戦車を生産し、陸軍兵器局の検査を受けた。 この時期、フォマーク社は依然としてIV号戦車を製造しており、それは1944年5月まで続けられ、IV号戦車からIV号駆逐戦車への製造転換については、遅滞なく行うことが要求されていた。 次の一覧表は、IV号駆逐戦車の生産数と検査数を示しており、月産数は徐々に増加して、1944年4月には100両を超え、同年7月にはピークを迎えて140両に達している。
1944年8月になって、長砲身の70口径7.5cm対戦車砲PaK42を採用したことにより、48口径7.5cm対戦車砲PaK39装備のIV号駆逐戦車は生産を終了し、最後の48口径7.5cm砲搭載型2両は、1944年11月に生産ラインからロールアウトした。 48口径7.5cm砲搭載型の総生産数は、804両である。 なお、1944年9月11日付で、48口径7.5cm砲搭載型は「IV号駆逐戦車F型」と名称が定められている。 |
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●実戦投入 1944年3月からIV号駆逐戦車は、機甲師団や機甲擲弾兵師団の戦車猟兵大隊に交付された。 各戦車猟兵中隊は、戦力定数指標(K.St.W.)1149で定められた編成通りであれば、10両または14両のIV号駆逐戦車を装備しており、機甲師団は10両編成の2個中隊と、その他に大隊指揮官用のIV号駆逐戦車を1両持っていた。 また、機甲擲弾兵師団の戦車猟兵大隊は、各14両のIV号駆逐戦車を持つ2個中隊を装備しており、大隊本部には、さらに3両のIV号駆逐戦車が配備されていた。 しかし、ここにももちろん例外が存在する。 パンツァーレーア(戦車教導)師団の第130戦車猟兵教導大隊は、IV号駆逐戦車を受領した最初の部隊であり、最初の計画では、1個中隊のみが14両のIV号駆逐戦車を装備し、残り1個中隊は14両のヤークトパンター駆逐戦車を受領するはずであった。 しかしながら、生産遅延によりヤークトパンター駆逐戦車が配備されなくなったため、第130戦車猟兵教導大隊は再編成されることとなり、結局、3個中隊に各9両のIV号駆逐戦車と、その他に、大隊本部用に4両のIV号駆逐戦車という編成となった。 2番目の例外は降下機甲師団ヘルマン・ゲーリングであり、1944年4月に師団戦車連隊の第III大隊用としてIV号駆逐戦車を受領している。 この師団へのIV号駆逐戦車の配備は、3個中隊に各10両ずつとなっており、その他に、降下戦車猟兵大隊ヘルマン・ゲーリングの指揮官用として、1両のIV号駆逐戦車が配備された。 戦闘部隊に直接配備されなかった残りのIV号駆逐戦車は、陸軍兵器局での実験や各種学校での教育訓練に使用された。 1944年6月6日の連合軍のノルマンディー上陸の際、西部戦線の部隊はわずか62両のIV号駆逐戦車が使用可能であった(パンツァーレーア師団に31両、第2機甲師団に21両とSS第12機甲師団ヒトラーユーゲントに10両)。 SS第12機甲師団ヒトラーユーゲントに配備が約束されていた残りの11両については、1944年6月22日以前には陸軍車両局の自由にはならなかった。 また、西部戦線に投入されたSS第17機甲擲弾兵師団ゲーツ・フォン・ベアリッヒンゲン、第116機甲師団、第9機甲師団、第11機甲師団、SS第9機甲師団ホーヘンシュタウフェンとSS第10機甲師団フルンズベルク(配備順)もまた、IV号駆逐戦車を装備していた。 1944年12月16日に開始されたアルデンヌ攻撃作戦の際、西部戦線の機甲師団および機甲擲弾兵師団において、なお92両のIV号駆逐戦車が投入されていた。 イタリアで連合軍と戦っているドイツ軍3個師団は、1944年4月までに合計83両のIV号駆逐戦車を受領している。 そのうち21両が降下機甲師団ヘルマン・ゲーリング、各31両が第3機甲擲弾兵師団と第15機甲擲弾兵師団の戦車猟兵大隊に配備されており、その中で、戦車連隊ヘルマン・ゲーリング第III大隊の21両のIV号駆逐戦車が、最初に実戦を経験した。 IV号駆逐戦車を装備したその他の全ての部隊は、東部戦線に投入された。 |
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<IV号駆逐戦車F型> 全長: 6.96m 全幅: 3.17m 全高: 1.96m 全備重量: 24.0t 乗員: 4名 エンジン: マイバッハHL120TRM 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン 最大出力: 300hp/3,000rpm 最大速度: 40km/h 航続距離: 210km 武装: 48口径7.5cm対戦車砲PaK39×1 (79発) 7.92mm機関銃MG42×1 (1,200発) 装甲厚: 10〜80mm |